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「自分を愛する力」を読んで感じたこと

成功も、失敗も経験という切り口で見ればどちらも貴重な体験

この本の帯には「僕が明るく生きられる理由。」という副題が書かれています。そして「自己肯定感はどのように育まれるのか。」と。ボクなりの解釈ではあの「五体不満足」を出版してから聞かれた数々の質問に対して、乙武さんがその理由を説明するには、これだけ経験と時間がかかったのではないかと思いました。教師や父親という役割を体験して、初めて自分の親の子育てや周囲の人々の愛情や関わりなどが、客観視できたのではないでしょうか。

本にも書かれているように、「五体不満足」の表紙の写真、乙武さんの屈託の無い笑顔のインパクトはとても大きく「どうしてこんなにしていられるの?」と多くの人に疑問を抱かせたはずです。Twitterも含め、きっと山ほどの同様な質問を頻繁に受けたことだろうことは想像に難く無いです。でも当時大学三年生だった彼には、それに返答するには無理があったのではないでしょうか。その後のスポーツライターとしてのライティングの経験、3年間の教師としての経験、そして2児の父としての経験を経て、15年経ってその疑問に、自身の導き出した答えを示してくれているように感じました。

最終章には「自分を愛せない人への処方箋」として精神科医の泉谷先生との対談が載っている。その中で泉谷先生の「人生における成功ってなんだろうって突き詰めてみると、どんなにお金持ちになろうが、偉い学者になろうが、人間は誰しも必ず死んでいくわけですよ。そう考えたとき、人生を生きることの意味というのは、成功することではなくて、どれだけいろんなことを味わうか、「経験」できるかということだと思うんです。」ということばがあります。なんだか凄く納得できます。失敗を極端に恐れる社会は、ぎすぎすしていてゆとりがありません。より有意義な体験なんだと思えれば、随分生きやすくなるのではないでしょうか。

小さな達成の繰り返しによるドーパミンの分泌。以前「やらされ感」でノルアドレナリンが「自発的」でドーパミンが分泌するでも書いたように、きっと乙武さんは人より多い小さな達成感の積み重ねによって、自分でドーパミンを出す方法を体得しているのだろうと思います。もちろんご両親の深い愛情が無ければ、同じように育つ事は難しいとは思いますが、読んでいてそんなことを感じました。いろいろと考えさせられるとてもオススメの一冊です。